【重要】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応について


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応について
 

一般社団法人 日本透析医学会     
理 事 長 中元 秀友
感染調査小委員会委員長 竜崎 崇和

 
 令和2年2月25日、政府は新型コロナウイルス感染症対策の基本方針を打ち出した。
 まず、総理大臣から「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)については、国内の複数地域で感染経路が明らかではない患者が散発的に発生しており、一部地域には小規模の患者集団、いわゆる患者クラスターの発生が把握されています。今が正に、感染の流行を早期に終息させるために極めて重要な時期となります。…続く」と説明された。
 この時期の感染拡大を可能な限り抑えることは、日本全体への感染の拡大を防ぐ上でも、透析医療への影響を最小限にとどめる上でも、極めて重要である。
 COVID-19 に対する感染対策は、2009年に日本透析医学会と日本透析医会が発行した「透析施設における新型インフルエンザ対策ガイドライン」に沿った対策を行うことが基本と考えるが、感染性が高い可能性や有効な治療薬がないという特殊性もあるので、より一層の注意が必要である。
 以下に、具体的な対策を改めて示す。 

1)37.5℃以上の熱と呼吸器症状のある透析患者には、来院前に透析施設に電話連絡していただき、通院(集団での送迎を避ける)および施設での対応(個室隔離あるは時間的・空間的隔離、ロッカー室の使用禁止、非感染者との院内での動線の分離など)を準備する。 

2)来院後に症状が確認された場合は、直ちに前述の隔離対策を行うとともに、接触者の経過観察を密にする(インフルエンザと違って、抗ウイルス薬の予防的投与ができない)。 

3)COVID-19 感染が疑われる場合は保健所と相談の上、指定病院へ紹介する。国による「新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安」では、2日程度 37.5℃以上の発熱あるいは強い倦怠感と呼吸困難が続く場合には、帰国者・接触者相談センターに相談するとされている。 

4)透析患者とともに医療スタッフの感染も危惧されるため、COVID-19 感染の疑いが 濃いスタッフは保健所に相談の上、指定病院に紹介し、感染が否定されるまでは出勤停止とする。 

5)院内での感染予防策は標準予防策とともに、飛沫感染と接触感染の予防策を強化する。
マスクは感染予防効果の根拠は弱いが、感染者とくに軽症患者や不顕性感染者からの伝播を防ぐ効果はあるため、院内および通院途上での装着を促す。環境整備、床や壁の清掃、ベッド周り・手すり・ドアノブ・ロッカー室・トイレなどの頻回接触面のアルコール消毒が極めて重要である。スタッフおよび透析患者の手指衛生も同様に重要で、とくにスタッフの正しい手洗いを徹底する必要がある(透析施設における標準的な透析操作と感染予防に関するガイドライン四訂版参照:2020年 5月五訂版発刊予定)。


 2月25日発表の政府の基本方針の中にもあるように、一般的な状況における感染経路は飛沫感染、接触感染 であり、空気感染は起きていないと考えられる。
 閉鎖空間において近距離で多くの人と会話する等の一定の環境下であれば、咳やくしゃみ等がなくても感染を拡大させるリスクがある。よって、透析室という閉鎖空間では、感染拡大防止に努めなければならない。
 以下に、感染経路につき解説するとともに、対策をもう一度上げる。

(1)飛沫感染
感染者の飛沫(くしゃみ、咳、つば など)と一緒にウイルスが放出され、他者がそのウイルスを口や鼻から吸い込んで感染する。
※主な感染場所:劇場、満員電車などの人が多く集まる場所

(2)接触感染
感染者がくしゃみや咳を手で押さえた後、その手で周りの物に触れるとウイルスが付着する。
他者がその物を触るとウイルスが他者の手に付着し、その手で口や鼻を触って粘膜から感染することになる。
※主な感染場所:電車やバスのつり革、ドアノブ、スイッチなど 

 透析治療を受けている方、高齢者、糖尿病、心不全、呼吸器疾患などの基礎疾患のある方や、免疫抑制剤や抗がん剤等を用いている方は、上記の症状が続く場合には、とくに注意が必要であり、最寄りの保健所あるいは主治医にまずは電話で相談してください。

 風邪や季節性インフルエンザ対策と同様に一人一人の咳エチケット(咳・くしゃみをする際に、マスクやティッシュ・ハンカチ、袖を使って、口や鼻をおさえること)、手洗いや擦式アルコール手指消毒薬の利用などの手指衛生がとても重要。

 人混みのところはできれば避けていただくなど、感染予防に十分注意すること。

 繰り返しですが、新型コロナウイルスの重症化リスク患者に透析患者があるため、当初の症状が軽微でも肺炎への移行の可能性を念頭に治療することが望まれます。

 最後に、新型コロナウイルス感染症の流行状況や対策は日々変化することが考えられます。常に最新の情報をご確認ください。

 なお、当ステートメントは、日本透析医会と日本腎臓学会のホームページを主に参照し作成した。また、日本感染症学会の新型コロナウイルス感染症への対応および厚生労働省の基本指針も参考とした。

日本透析医会 http://www.touseki-ikai.or.jp/htm/03_info/doc/20200226_corona_virus_4.pdf
日本腎臓学会 https://www.jsn.or.jp/topics/notice/_3688.php
日本感染症学会 http://www.kansensho.or.jp/modules/topics/index.php?content_id=31
厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html


令和2年2月26日