理事長からのご挨拶


 理事長からのご挨拶







 
一般社団法人 日本透析医学会 理事長    
武本 佳昭   
(大阪公立大学大学院泌尿器病態学病院教授)  
  

 この度,2022 年6 月30 日に開催されました一般社団法人日本透析医学会理事会において,日本透析医学会理事長に再任されました.
 
 さて日本透析医学会は1968 年(昭和43 年)に任意学術団体の人工透析研究会として発足し,1985年(昭和60 年)に日本透析療法学会と改称しています.1993 年(平成5 年)には社団法人としての認可を受け,日本透析医学会として発展してきました.2012 年(平成24 年)9 月3 日からは,公益法人制度改革に伴う法人形態の見直しにより,一般社団法人日本透析医学会として再出発しました.

 現在日本透析医学会は学会員数18,000 名(個人会員,施設会員,賛助会員を含む)を誇る本邦でも有数の大きな学会であり,日本透析医学会学術集会・総会は参加者約20,000 人の日本における透析療法にかかわる医療関係者が一堂に会する学術集会として知られています.毎年多くの参加者のもと,熱い議論が交わされています.このような本邦でも有数の学会の理事長に選任されたこと,身に余る光栄なことと感じています.

 特に、昨年及び一昨年はCOVID19のパンデミックにより日本透析医学会学術集会がwebを併用して開催され参加者も激減しましたが、webにおいても熱い議論がなされました。本年は一部web配信も行われまししたが従来通りの現地開催形式で学術集会が行われ、webには無い活気あふれた議論が行われたことはうれしい限りでした。今後ますます活発な活動が推進されることを祈念しております。

 日本透析医学会の進む方向性は言うまでもなく、学術的なエビデンスを蓄積し、より良い治療を患者さんへ提供することであります。そのために多くのガイドラインや提言をしてきております。その中で腎性貧血ガイドライン・CKD-MBDガイドライン・血液透析処方および導入のガイドラインにおいて適正な数値目標を示し、多くの医療者が治療目標とすることにより患者さんの生命予後が改善してきていると考えております。そのほか、血液透析療法の質の向上に資する透析液の清浄化・血液透析器の機能に関する提言を行うことにより、我が国における透析液は世界トップクラスの清浄化が達成されていると考えております。これらの結果は日本透析医学会会員のボランティア精神により集められた統計調査のデータを用いたエビデンスにより達成されたといえると思います。この統計調査のデータは日本透析医学会会員の宝であり、今後の透析療法の進んでいく道標になると考えて今後も大切にしていきたいと考えております。

 統計データの収集においては会員の方に多大な苦労をおかけしておりますが、将来的には世界標準になりつつあるEDC(Electronic Data Capture)システムでデータを収集するようにいたしたいと考えております。

 一方、日本透析医学会専門医をめぐる状況もなかなか厳しくなってきておりますが、日本専門医機構と密な連携を取りながら前理事長中元先生の方針を踏襲して日本透析医学会専門医の確立を目指していきたいと考えております。
 
 私は泌尿器科出身であり透析にかかわる外科的な手技についても新たな試みをしていきたいと考えております。日本透析医学会では「2011年版 慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン」を提案しましたが、その後種々のデバイスの進歩もあり、高度なデバイスの安全な使用について日本透析医学会でも役割を果たす必要が出てきております。具体的には2022年度中に日本透析医学会認定血管内治療医 を創設し高度なデバイスを使用した治療の安全を確保していきたいと考えております。

 最後になりますが、日本腎臓学会,日本腹膜透析医学会,日本移植学会,日本臨床腎移植学会等の関連学会と協力して、慢性腎臓病患者さんに対してより良い腎代替療法が提供できるように日本透析医学会として行動を起こしていきたいと考えますので、会員の皆様のご協力よろしくお願いいたします。

  
  令和3年6月吉日