【重要】透析患者における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のPCR検査について

令和262
 
透析患者における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のPCR検査について
 
一般社団法人日本透析医学会
理事長 中 元 秀 友
公益社団法人 日本透析医会
会長 秋 澤 忠 男
一般社団法人 日本腎臓学会
理事長 柏 原 直 樹
 
 新型コロナウイルス感染症が拡大する中、通常の透析医療においても十分な予防策を講じる必要が出てきています。透析患者は高齢者も多く、糖尿病や高血圧症など合併症を有する患者も多いことから、重症化するリスクが高い可能性があります。また、日々の診療において接する多くの一般患者の中に、一定数の新型コロナウイルス陽性者が存在することが報告されており、透析施設内でCOVID-19感染が発生した場合には、感染が拡大するのみならず、診療機能の抑制・停止に直結します。各病院で「院内感染を防ぐ水際対策」が遅れれば、未曾有の医療崩壊につながることが考えられます。このような状況を鑑み、日本透析医学会、日本透析医会および日本腎臓学会では、厚生労働大臣に対して、①無症候患者に対するSARS-CoV-2PCR検査の保険適応、②PCR検査に必要な個人防護具と試薬の確保を要望してまいりました。
 令和236日、SARS-CoV-2の核酸検出(PCR検査)が保険適応となりました。この保険適応に関しては、「無症状であっても、医師が判断し、実施した場合には算定できる」との見解が出されています。一方、424日の中医協総会において、医師が「新型コロナウイルス感染を疑い、患者の治療等を完遂するために必要不可欠である」と考える場合には、PCR検査を保険診療として実施することが可能であるが、入院患者全員について、新型コロナウイルス感染の疑いがない患者に対してもPCR検査を実施するような場合には、保険診療として認めることは難しいとの見解がでております。確かに院内感染拡大を防止することは重要ですが、PCR検査で陰性であっても、その時点で感染していない可能性が高いことを示すものであり、その後の陰性を保証するものではありません。そこで、日本透析医学会、日本透析医会および日本腎臓学会では、「無症状の透析患者に対するSARS-CoV-2PCR検査の適応基準」を提案することといたしました。もちろん、発熱や呼吸器症状などからCOVID-19感染を疑う場合はこの限りではないことを申し添えます。
 
無症状の透析患者に対するSARS-CoV-2PCR検査の適応基準
  1. 透析室内(送迎の動線を含む)における感染者(透析患者および医療者等)との接触、および患者家族に感染者がいる場合、いわゆる濃厚接触と考えられる透析患者
  2. 献腎移植が決定した移植待機中の透析患者
  3. その他、医師が検査すべきと判断した透析患者(例えば、疑診例との濃厚接触者)
 
また、以下の条件に該当する患者に関しては、紹介先の病院等とも相談のうえ、検査の必要性をご相談ください。
  
     4. 全身麻酔を要する手術を予定している透析患者

     5. 生体腎移植を予定している透析患者
     6. バスキュラーアクセス手術等を予定している透析患者
     7. エアロゾルが発生しやすいような検査や処置を予定している透析患者
     ① 気管支内視鏡検査
     ② ネブライザー、喀痰採取検査
     ③ 口腔、鼻腔、目などの局所麻酔を要する処置
     ④ 上部内視鏡検査など