透析患者のみなさま、一般の方々、医療者および報道の方々へ

透析患者のみなさま、一般の方々、医療者および報道の方々へ
 

これまでの経緯
 日本透析医学会は、厚生労働省が2007年に公表した「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」に準拠して作成した、「維持血液透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言」を2014年に公表しました。日本透析医学会としてこの提言を参考にしながら、すべての患者さんによりよい医療とケアを提供することを基本と考えています。
 2019年公立福生病院における透析患者さんの透析中止についての報道後、福生病院から日本透析医学会に調査の依頼があり、本件に関する調査委員会を立ち上げました。その後本件に関しては、調査委員会が中心となり調査を行っています。3月15日に公立福生病院に訪問させて頂き問題となっている44歳の女性の事例を中心に調査を行いました。今後これまでに報告されているその他の事例に関しても、継続して調査を行って行きます。倫理的な問題について調査結果をもとに議論を開始しています。

現在の進行状況と今後の予定
 現在の進行状況と今後の予定を報告いたします。3月22日には、本件に関する調査委員会(土谷 健委員長)と本学会の常置委員会である、倫理委員会(倉賀野隆裕委員長)の合同会議が開催され、今回の事例で明らかとなった倫理的問題を議論しました。同日行われた本学会の理事会に調査委員会の調査経過を報告し、倫理的問題については今後継続して倫理委員会で検討していくこと、今後も調査委員会で継続して他の症例を含めて調査を継続して行うことを決定いたしました。今後の予定として4月中に倫理委員会で結論を出し、5月中に調査委員会(土谷 健委員長)報告とあわせて理事会ステートメントを公表する予定です。

ガイドライン検討委員会について
 厚生労働省は2018年に新たに「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」を公表し、協働意思決定(shared decision making: SDM)や人生会議(advance care planning: ACP)の重要性を指摘しました。これまでの経過とあわせて、日本透析医学会では提言にSDMとACPおよび終末期でない患者さんの意思決定プロセスなどを追加して改訂する時期に来ていると判断しました。エビデンスが少ない領域ですが、提言ではなく、今回、標準的なプロセスを示すことを目的として、意思決定プロセスを公表すべく委員会「人生の最終段階における維持透析の開始と継続に関する意思決定プロセスに関するガイドライン(案)作成委員会」(委員長:岡田一義理事、副委員長:倉賀野隆裕理事、酒井 謙理事、土谷 健理事)を立ち上げました。委員会では新たなガイドラインを今年中に作成することを目標としています。

 現在までの議論で、日本透析医学会の考えとして「透析を行っている患者さんは終末期には含まないこと」を確認しています。しかしながら患者さんの状態は、透析に伴う合併症等を含めて個々に判断して行く事が重要です。それらを踏まえて、現在問題となった事例を慎重に検討している段階です。報道の皆様方もその点を踏まえて、慎重な報道を御願いいたします。
 日本透析医学会は、すべての患者さんに最良の医療とケアを提供することを目標に活動をしています。よろしくご理解を御願いいたします。

 平成31年3月25日
一般社団法人日本透析医学会 
理事長 中元 秀友