理事長に就任して
社団法人 日本透析医学会
理事長 秋 澤 忠 男
(昭和大学医学部腎臓内科)
2008年6月に神戸で開催された第53回日本透析医学会通常総会において理事長に選任され、学術大会終了後に理事長に就任いたしました。現在医療界は多くの苦難に直面し、医療崩壊が現実の問題として進行しつつあります。透析医療においても問題は山積しています。こうした問題点を少しでも解決し、荒廃した医療の復権に向けて、理事、監事、評議員の皆様と一致団結し、全力をあげて透析医療の向上に邁進する所存です。
さまざまな課題の中で以下の5点について、私の任期中の抱負を述べさせていただきます。
第一は法人組織の改革です。顧みると日本透析医学会は平成5年に越川昭三初代理事長のもと日本透析療法学会から発展的に改組・発足し、以来私が第10代目の理事長にあたります。この間すばらしい発展を遂げた15年の歴史の中で、今期は学会組織としての大きな変換が迫られています。それは公益法人制度改革に伴う法人形態の見直しで、一般社団法人、公益社団法人の選択、それらへの適合に向けた定款や諸規則の改訂、事務局機能の強化などが不可欠となります。今年12月1日に施行される施行規則に基づき、日本透析医学会も新たな法人組織としての再出発を図る必要があるのです。本学会に課せられた将来の使命と果たすべき役割を熟考し、適切な法人形態の選択と円滑な移行を推進したいと考えます。
第二は学術の向上です。日本透析医学会は透析医学に関する研究の進歩と知識の普及を図る学術団体であり、その使命は学術の向上と普及にあります。この面では統計調査を通じた透析患者の現状の的確な把握、新技術の開発や応用、治療ガイドラインの作成や改訂など多くの業績が得られ、わが国の透析医療は世界最良のレベルにあることは我々の誇りでもあります。しかしそれでもなお透析患者の平均余命は一般人口の50%に満たず、多くの合併症に患者さんは苦しみ、QOLや社会復帰は不十分のままです。こうした事態を改善するのは我々の学会だけの力では限りがあります。多くの関連学会とさらに緊密な協力関係を構築し、患者の予後調査、合併症の病態解明、治療・管理方法の向上などに一層の努力を傾ける必要があります。
第三は人材の育成です。透析医療分野を志す若手の臨床医、研究者は減少傾向にあります。透析の現場は3K職場として敬遠され、若手を引き付ける学問的興味やインセンティーブが不足している懸念があります。また、結婚、妊娠、出産などを契機に現場を離れた女性医師に対する復帰プログラムや就業支援制度も不十分です。さらに男女共同参画の見地からは、女性医師の一層の活躍が期待されます。人材の育成は医師や研究者に限定されません。透析医療はチーム医療であり、コメディカルスタッフなくしては成立しない医療です。こうした透析に係るコメディカルを専門職として認定し、そうした人材の育成制度を確立して行くことも我々の務めです。こうした観点から、広く人材を透析医療にリクルートし、将来を担う人材育成を進める必要があります。
第四はさらなる社会への貢献です。 慢性腎臓病対策は国民的課題とされており、日本透析医学会も日本慢性腎臓病対策協議会の中核メンバーとして活躍してきました。こうした活動をさらに強化し、適切な腎臓移植の普及・促進活動を含め、透析導入前の慢性腎臓病患者の発見・予防・治療・管理の向上と、腎臓移植の拡大に学会をあげて取り組むことで、国民の健康増進のみならず、透析患者の予後改善に資することができれば、と念じています。
第五は国際活動の強化です。 多くの会員が国際学会や学術誌に優れた研究成果を報告し、我が国の学術業績が世界の透析医療に大きなインパクトを与えてきました。こうした我が国からの情報発信をさらに促進し、世界の腎不全医療の学問的発展に一層の貢献を図りたいと考えます。また、先進国の一員として発展途上国の腎不全医療の普及・発展を効果的に援助するには、教育や人材の育成を含むより広範囲な協力が必要です。さらに、1990年以来となる国際腎臓学会(ISN)の日本招致や、その前哨となるISNのNEXUSシンポジウムの日本での開催にも、日本腎臓学会と協力しそれらを成功に導く必要があります。 こうした国際的課題にも積極的に取り組む所存です。
多くの先達のご努力で日本の透析医療と日本透析医学会は飛躍的な発展を遂げ、透析医は標榜可能ともなりました。しかし一方で、我々日本透析医学会に課せられた責務はますます重たくなります。こうした社会から託された責任と義務を達成できるよう、会員の皆様の暖かいご支援とご協力を切にお願い申し上げます。
平成20年 7月吉日