理事長再任にあたって

 

社団法人 日本透析医学会
理事長  秋 澤 忠 男
(昭和大学医学部内科学講座
腎臓内科学部門)


 2010年6月に神戸で開催された第55回日本透析医学会通常総会において理事長に再任され,引き続き理事長を務めることになりました.2年前に私が理事長に就任して以降も医療界は混迷をきわめ、透析医療においても新たな諸課題が噴出し、前途は予断を許しません。こうした山積した問題点を少しでも解決し,よりよい透析医療の実現と学会の発展のために、理事,監事,評議員の皆様と一致団結し,今期も全力をあげて邁進する所存です.
 前任期の開始に当たり、私は以下の諸点について,抱負を述べさせていただきました。今期もこの抱負を継続し、前任期中に達成できなかった課題の解決と問題点の克服に努めてまいります.

1.法人組織の改革 公益法人制度改革に伴う法人形態の見直しに伴い、日本透析医学会は2008年12月1日より特例民法法人に移行し、2013年11月30日までの移行期間中に,一般社団法人か公益社団法人への移行認可・認定申請を行うことが義務付けられています。それに向けて新法人の定款と定款施行細則の素案について、今年の評議員会と総会でご承認いただき、新法人の骨格はほぼ固まりました。しかし、一般社団法人、公益社団法人のいずれを選択すべきかの根幹については,新法人の担う公益事業の解釈に統一した結論が得られず、選択を今期に先送りしました。今期はこれらを慎重に精査し、他学会の動向を見極め、次期総会に新法人への移行認可・認定申請を提案できるよう、準備を進めてまいります。

2.学術の向上 透析医学に関する研究の進歩と知識の普及を図る学術団体である日本透析医学会の最大の使命は学術の向上と普及にあります.この面では、統計調査における腹膜透析患者数の正確な把握、統計調査資料を活用した会員の公募研究の推進、新しい治療ガイドラインの公表・作成、また従来のガイドラインの改訂など、前任期にも多くの業績が得られました。また、学会の策定した諸基準が透析液水質確保や新たに承認された腎不全・透析患者治療用薬剤の承認基準に使用され、懸案であったon-line HDFについても、学会の提言がその機器の認可基準に準用されるなど、学会の学術活動の成果は日々の透析医療の現場にも広く活用されるようになりました。わが国の誇る世界最良の透析医療水準をさらに向上し、透析患者の生命予後とQOLを改善する努力を多くの関連学会、会員の皆様と緊密に協力し、推進して行く所存です。

3.人材の育成 減少傾向にある透析医療分野を志す若手の臨床医,研究者、コメディカルスタッフを増加させるためには多くの対策が必要とされます。3K職場と評される透析医療の就労環境を改善するためにも、この分野にたくさんの医師、コメディカルスタッフを呼び込むことが不可欠です。結婚、妊娠、出産、育児などにより常勤は困難となった女性医師・スタッフの方々にも、可能な時間帯に透析室で勤務して頂ければ、各自の医療技術や知識が維持されるだけでなく、透析医療の現場にも大きな助けとなります。男女共同参画の見地からは、復帰プログラムや就業支援制度の確立に向けて,女性の一層の活躍をサポートするこうしたシステムの構築が重要です。また専門医の養成にも多くの問題が指摘されています。日本専門医制評価・認定機構の求める専門医の要件をクリアする学会認定施設や教育関連施設数は必ずしも十分ではなく、さらに地域格差が著明となっています。全国どこの地域でも、すぐれた人材を専門医に育成できる教育システム(認定医制度)の改革も重要な課題です。研修医の透析分野への積極的リクルートにも取り組まなければなりません。チーム医療である透析医療を支えるコメディカルスタッフを専門職として認定し,優秀な人材の育成をさらに進めて行くことも我々の務めです.

4.社会への貢献 国民的課題である慢性腎臓病対策に日本透析医学会は日本慢性腎臓病対策協議会の中核メンバーとして参加し、多くの成果をあげてきました。しかし、急性腎障害患者を含め透析患者数は確実に増加して行きます。腎臓病患者の発見・予防・治療・管理に、また末期腎不全医療の透析と並ぶ両輪である腎臓移植の普及・啓発活動に全力で取り組むことにより、透析患者を含む末期腎不全の予後向上と、国民の健康福祉の増進に寄与できることを願っています。 

5.国際活動の強化 世界の透析医療に大きな影響を与える我が国からの研究業績の発信をさらに進め,世界の腎不全医療の学問的発展および透析患者の予後改善に役立つ学術活動を展開します。今年は国際腎臓学会のNEXUSシンポジウムを日本腎臓学会と共同して運営し、学術的業績のみならず、若手の教育育成に高い評価を得ることができました。また、急性腎障害ネットワーク(AKIN)サミットWSに学会の代表を派遣し、国際的診断基準の作成に参加するなどの実績をあげてきました。今期は発展途上国の腎不全医療を担う人材への教育やその育成を含むより広範囲な国際協力活動を繰り広げ、日本透析医学会がさらに高い国際的評価を得るよう取り組んでまいります。

6.その他 学会HPは学会の顔であると同時に、会員相互のコミュニケーションの場でもあります。現在会員専用のHPは設置されていませんが、これを整備し、HPのより有効利用をはかりたいと考えています。今期から運用の始まる利益相反規定も、その円滑な導入を進めます。また、臨床研究の審査機能を倫理委員会に付与することも計画しています。

 多くの先達のご努力で日本透析医学会は飛躍的な発展を遂げて来ました。と同時に私たち日本透析医学会には高い成果が期待され、その責務は年々重くっています。社会から託された責任と義務に応え、世界に誇る学術集団として成長できるよう,会員の皆様の暖かいご支援とご協力を再びお願い申し上げます.

平成22年7月吉日

 


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